戸籍法等の改正に関する要綱案(案)

キラキラネームはダメになる??

法制審議会戸籍法部会第14回会議(令和5年2月2日開催)戸籍法等の改正に関する要綱案(案)

 

第1 氏名の仮名表記の戸籍の記載事項化に関する事項

 1 戸籍の記載事項への追加

  戸籍法第13条に規定する戸籍の記載事項として「氏名を片仮名等で表記したもの(以下「仮名表記」という。)」を追加するものとする。

  (注)氏名の仮名表記に用いるのは、現代仮名遣い(昭和61年内閣告示第1号)本文第1に定められた直音、拗音、撥音、促音を片仮名に変換したもののほか、片仮名表記の小書き及び長音記号等とする。

 2 氏名の仮名表記の許容性及び氏名との関連性氏名の仮名表記の許容性及び氏名との関連性に関する審査について、戸籍法に「氏名として用いられる文字の読み方として一般に認められているものでなければならない」という趣旨の規定を設けるものとする。

 (注)市町村長の行う本文第1の2の審査においては、幅広い名乗り訓等を許容してきた我が国の命名文化を踏まえた運用とする。

 

(補足説明)

1 本文の規律の趣旨

 我が国においては、一つの漢字について、中国から伝来した読み方である音読みのほか、漢字に日本語(和語)などを当てた読み方である訓読みがあり、一つの漢字に複数の読み方が用いられることが多い。また、我が国における命名文化として、最初にある個人が名の読み方として考えた漢字の読みが広まって名に用いられる読み方として社会において慣用される読み方(名乗り訓)となるという
慣習があり、その類型としては、例えば、部分音訓、いわゆる当て字(当て読み)や熟字訓など様々なものがある。

 本文の規律は、こうした命名文化や名乗り訓が創造される慣習を否定したり、その創造を制約したりするものではなく、それらを前提とし、常用漢字表の制定経緯や名に名乗り訓が多用されてきた歴史的経緯等を踏まえて、氏名の仮名表記の許容性及び氏名との関連性に係る審査についての規律を設けるものである。

 なお、国民への周知に当たっては、以上のような本文の規律の趣旨についても併せて周知することが考えられる。

 

2 想定される運用

 本文の規律における一般に認められている読み方かどうかは、上記1のような命名文化や名乗り訓が創造される慣習、名に名乗り訓が多用されてきた歴史的経緯も念頭に入れ、社会において受容され又は慣用されているかという観点から、常用漢字表又はその付表に掲載されているものや、漢和辞典など一般の辞書に掲載されているものについては、幅広く認めることが考えられ、一般の辞書に掲載されていない読み方についても、届出人による説明を踏まえ、一般に認められているものといえるかどうかを判断することが考えられる。

 なお、こうした点についての判断は、特に届出を受理するかの判断をする戸籍窓口において問題となるものであるが、それが適切に運用されることが重要である。こうした運用に際しては、上述のとおり、幅広い名乗り訓等を許容してきた我が国の命名文化を踏まえて、柔軟に受け入れることが求められる。

 その上で、例外的に許容性が認められないものとしては、

例えば、①漢字の持つ意味とは反対の意味による読み方

    ②読み違い(書き違い)かどうか判然としない読み方

    ③漢字の意味や読み方との関連性をおよそ(又は全く)認めることができない読み方など、

 社会を混乱させるものについては、一般に認められている読み方として許容されないとすることが考えられる。

 以上について、上記1の本文の規律の趣旨と併せて運用の全体像を示すなど、戸籍窓口において統一的に円滑な審査ができるような内容の法務省民事局長通達等を作成することを想定している。

 

第2 氏名の仮名表記の収集に関する事項

 1 氏又は名が初めて戸籍に記載される者に係る収集等について

  ⑴ 戸籍の届書の記載事項(戸籍法第29条)に届出事件の本人の「氏名の仮名表記」を追加するとともに、棄児発見調書(戸籍法第57条第2項)の記載事項に「氏名の仮名表記」を追加し、氏又は名が初めて戸籍に記載される者の氏名の仮名表記を戸籍に記載するものとする。

  ⑵ 届書の記載事項の整理
   届出人と届出事件の本人が同一である場合にも、戸籍法第29条に規定する戸籍の届書の記載事項として「届出事件の本人の氏名」を明記するものとする。

 

 2 既に戸籍に記載されている者に係る収集について

  経過措置として、次のような趣旨の規律を設けるものとする。

  ⑴ 新法の施行の際現に戸籍の筆頭に記載されている者(以下「戸籍の筆頭者」という。)は氏の仮名表記の届出を、戸籍に記載されている者は名の仮名表記の届出を、それぞれ施行日から1年以内にすることができるものとする。

  ⑵ 戸籍の筆頭者が当該戸籍から除籍されているときは、第二順位として配偶者、第三順位として子(いずれもその戸籍から除籍された者を除く。)が施行日から1年以内に限り、氏の仮名表記の届出をすることができるものとする(既に当該戸籍について⑴の氏の仮名表記の届出がされた場合を除く。)。

  ⑶ 新法の施行の際現に戸籍に記載されている者(戸籍の筆頭者を除く。)であって、施行日以後に新戸籍の筆頭に記載されるものは、施行日から1年以内に限り、氏の仮名表記の届出をすることができるものとする(新戸籍に記載される氏について、既に⑴又は⑵の氏の仮名表記の届出がされた場合を除く。)。

  ⑷ 本籍地の市町村長は、施行日から1年を経過した日に、氏名の仮名表記を戸籍に記載するものとする(氏の仮名表記については、⑴、⑵又は⑶の届出がされた場合を除く。名の仮名表記については、⑴の届出がされた場合を除く。)。

  ⑸ 本籍地の市町村長は、施行日後遅滞なく、戸籍に記載されている者に対し、⑷により記載しようとする氏名の仮名表記を通知するものとする(あらかじめ通知することが困難である場合を除。)。

  ⑹ 戸籍の筆頭者は⑷により記載された氏の仮名表記について、戸籍に記載された者は⑷により記載された名の仮名表記について、それぞれ一度に限り、家庭裁判所の許可を要せず、届出のみで変更することができるものとする。氏の仮名表記の変更の届出について、戸籍の筆頭者に配偶者があるときは、配偶者とともに当該届出をしなければならないものとする。

  ⑺ ⑹により氏の仮名表記の変更の届出をすることができる戸籍の筆頭者が当該戸籍から除籍されているときは、第二順位として配偶者、第三順位として子(いずれもその戸籍から除籍された者を除く。)が氏の仮名表記の変更の届出をすることができるものとする(既に当該戸籍について⑸又は⑹の氏の仮名表記の変更の届出がされた場合を除く。)。

  ⑻ ⑴、⑵、⑶、⑹又は⑺により、戸籍の筆頭者又は戸籍に記載されている者が、氏名の仮名表記として、一般に認められている読み方以外の読み方によるものを届け出る場合には、現に使用していることを証する書面を提出しなければならないものとする。

  ⑼ 本籍地の市町村長は、⑴から⑻までに必要な限度で、関係地方公共団体の長等に対し、戸籍に記載されている者の氏名の仮名表記に関する情報の提供を求めることができるものとする。

 

(補足説明)

1 氏の仮名表記について(本文⑴及び⑷の規律)

 氏の仮名表記に係る届出人は戸籍の筆頭者であることから、筆頭者が単独で届け出た氏の仮名表記が戸籍に記載されることとなるが、届出に係る氏の仮名表記について筆頭者以外の同籍者が使用するものとは異なる場合も想定される。

 また、本文⑷により本籍地の市町村長が氏の仮名表記を戸籍に記載するに当たっては、住民票に記載されているふりがな情報を参考とすることを想定しているところ、戸籍の筆頭者と同籍者との間で住民票に記載されたふりがなが異なる場合には、筆頭者に係るふりがなを参考として氏の仮名表記を戸籍に記載することとなる。

 そこで、国民への周知に当たっては、同籍者と調整した上で、氏の仮名表記を届け出ることが望ましい旨及び本籍地の市町村長が氏の仮名表記を戸籍に記載するに当たっては、筆頭者に係る氏の仮名表記が記載される旨、周知するなど、配偶者に対する配慮が必要と考えられる。

 

2 情報提供の求め(本文⑼の規律)

 氏名の仮名表記を戸籍に記載するに当たり、旅券の発給を受けている者については、旅券に記載された氏名のローマ字表記と整合させるのが望ましく、関係省庁が連携して必要な措置を講ずる必要がある旨の意見があった。

 また、本籍地の市町村長による氏名の仮名表記の記載に際し、あるいは、一般に認められている読み方以外の読み方による仮名表記が現に使用されているものか否かを審査するに際し、特定の者の氏名の仮名表記に関する情報が必要となる場合があり得ることから、本籍地の市町村長は、本文⑴から⑻までに必要な限度で、関係地方公共団体の長等に対し、戸籍に記載されている者の氏名の仮名表記に関する情報の提供を求めることができるものとすることを提案している。この規律を根拠として、旅券に記載された氏名のローマ字表記に関する情報の提供を求めることが考えられるところ、詳細については、今後、外務省領事局と調整を進める予定である。

 

第3 氏名の仮名表記の変更に関する事項

 1 氏又は名の変更に伴わない場合の規律

  戸籍法に次のような趣旨の規律を設けるものとする。

  ⑴ やむを得ない事由によって氏の仮名表記を変更しようとするときは、戸籍の筆頭に記載した者及びその配偶者は、家庭裁判所の許可を得て、その旨を届け出なければならない。

  ⑵ 正当な事由によって名の仮名表記を変更しようとする者は、家庭裁判所の許可を得て、その旨を届け出なければならない。

 

 2 氏又は名の変更に伴う場合の規律

  戸籍法第107条及び第107条の2の規律を次のように改めるものとする。

  ⑴ 戸籍法第107条第1項の規定により氏を変更しようとするときは、氏及び氏の仮名表記を変更することについて家庭裁判所の許可を得て、その許可を得た氏及び氏の仮名表記を届け出なければならない。

  ⑵ 戸籍法第107条第2項の規定により外国人配偶者の称している氏に変更しようとするときは、婚姻の日から6か月以内に限り、家庭裁判所の許可を得ないで、その旨及び変更しようとする氏の仮名表記を届け出ることができる。

  ⑶ 戸籍法第107条の2の規定により名を変更しようとする者は、名及び名の仮名表記を変更することについて家庭裁判所の許可を得て、その許可を得た名及び名の仮名表記を届け出なければならない。

 

第4 その他
その他所要の規定を整備するものとする

 

引用:法務省:法制審議会戸籍法部会第14回会議(令和5年2月2日開催) (moj.go.jp)