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Release: 2021/05/29 Update: 2021/05/29

船舶における海洋環境保護

間もなく5月も終わりを迎えます。

今回のテーマは、「船舶における海洋環境保護」がテーマです。

皆さんが「海洋汚染」と聞いて思い浮かぶのは、モーリシャス諸島沖合で

実質的に日本の海運会社が所有しているパナマ船籍の貨物船「WAKASHIO」の

座礁・船舶燃料の海洋汚染ではないでしょうか。

この事故は、日本時間7月26日(日)モーリシャス島沖で座礁により船体が

損傷し、救助作業中の8月6日(木)に燃料油が流出しました。このとき、

船外に流出したと推定される燃料は約1,000MT(メトリックトン)と

発表されています。

燃料の流出により現場海域・地域に甚大な影響を及ぼしました。

 

さて、日本においては海洋環境を保護するための油の排出を制限している

法律はなんでしょうか。

 

 

答えは、「海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律」です。

 

この法律の第1条には次のように目的が書かれています。

(目的)
第1条
 この法律は、船舶、海洋施設及び航空機から海洋に油、有害液体物質等及び廃棄物を排出すること、船舶から海洋に有害水バラストを排出すること、海底の下に油、有害液体物質等及び廃棄物を廃棄すること、船舶から大気中に排出ガスを放出すること並びに船舶及び海洋施設において油、有害液体物質等及び廃棄物を焼却することを規制し、廃油の適正な処理を確保するとともに、排出された油、有害液体物質等、廃棄物その他の物の防除並びに海上火災の発生及び拡大の防止並びに海上火災等に伴う船舶交通の危険の防止のための措置を講ずることにより海洋汚染等及び海上災害を防止し、あわせて海洋汚染等及び海上災害の防止に関する国際約束の適確な実施を確保し、もつて海洋環境の保全等並びに人の生命及び身体並びに財産の保護に資することを目的とする。

 

海洋への排出はもちろん、海底下に廃棄することも規制するとしています。

 

この法律では、を次のように定義しています。

 

(定義)

第3条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

一 (略)
二  原油、重油、潤滑油、軽油、灯油、揮発油その他の国土交通省令で定める油及びこれらの油を含む油性混合物(国土交通省令で定めるものを除く。以下単に「油性混合物」という。)をいう。
 
 
また、排出についての定義は
 
(定義)

第3条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

一~六(略)
七 排出 物を海洋に流し、又は落とすことをいう。
 
 
そして、船舶からの油の排出は法第4条において、原則禁止されています。
 
(船舶からの油の排出の禁止)

第4条 何人も、海域において、船舶から油を排出してはならない。ただし、次の各号の一に該当する油の排出については、この限りでない。

一 船舶の安全を確保し、又は人命を救助するための油の排出
二 船舶の損傷その他やむを得ない原因により油が排出された場合において引き続く油の排出を防止するための可能な一切の措置をとつたときの当該油の排出
船舶の安全確保するための排出、船体の損傷や不可抗力で油を排出してしまった
場合でも引き続く油の排出を防ぐための一切の措置を講じた場合には、違反となりません。
 
では、法第4条に違反して油を排出した場合の罰則は
 
故意犯は、1000万円以下の罰金(法55条1項1号)
 
過失犯は、500万円以下の罰金(同条2項)
 
となっております。
 
 
 
海はみんなのものです。
 
持続可能な社会を実現するためには欠かすことのできない海洋資源が豊富にあります。
その貴重な海を汚さないためにも、船主、海運会社、運航会社、そして船舶職員、
乗組員は一丸となって日ごろからの機器の整備はもちろん、高い海洋保全意識を持ち、
絶対に油は流さないという強い使命感を持って職務に当たっていく必要があるのではないでしょうか。
 
海洋汚染 モーリシャス
 

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