船員労働の基本(労災保険)
現在、運輸局の窓口で雇入契約の届出、更新をする際には必ず次の3つの加入状態を確認されます。
①船員保険 ②労災保険 ③雇用保険 です。
この中の1つでも手続きが欠けていると船員として働けません。
②の労災保険の正式な名称は、「労働者災害補償保険」といいます。
この労災保険は、労働者災害補償保険法に基づき、業務上の事由又は通勤による労働者の負傷、疾病、障害、死亡等に対して迅速かつ公正な保護をするために、政府が管掌する保険です。
この労災は、船員だけ特別な制度ではなく、陸上の労働者も同様に保護されている制度です。
原則として、労働者を1人でも雇用する事業は、すべて対象事業です。
※一部の水産業などは、適用事業所にならない。(任意適用のため、労災に加入することは可能。)
そして、船員保険や健康保険と異なる点は、労災保険の加入者は事業主であることです。そのため、保険料はすべて事業主負担となります。つまり、船員の皆さんの給料から天引きされる労災保険料というのは存在しません。
船員保険による手厚い給付について説明する前に、まずは労災保険の基本について説明しておきましょう。
職務上の疾病や怪我については、労災保険の給付が基礎となります。
労災保険の保険給付には「業務災害」に関するものと「通勤災害」に関するものがあります。
ここでは、業務災害についてのみ見ていきます。業務災害の場合の保険給付は、
①療養補償給付:医療機関で療養を受けるとき
②休業補償給付:傷病の療養のため労働することができず、賃金が受けられないとき
③障害補償給付:傷病が治癒して障害等級に該当する身体障害が残ったとき
④遺族補償給付:労働者が死亡したとき
⑤葬祭料:労働者が死亡したとき
⑥傷病補償年金:療養開始後1年6ヶ月経過しても傷病が治癒しないで障害の程度が傷病等級に該当するとき
⑦介護保障給付:障害(補償)年金または傷病(補償)年金の一定の障害により現に介護を受けているとき
①の療養(補償)給付には、現物の給付としての「療養の給付」と現金給付としての「療養の費用の支給」との2種類があります。
⑴療養の給付:被災労働者が労災病院や労災指定病院等において、無料で必要な治療などを受けることができる給付
⑵療養の費用の支給:労災病院や労災指定病院以外で治療などを受けた場合は、その治療などに要した費用を労働者本人が病院に支払い、その後所轄労働基準監督署に請求して現金給付を受けるものです。
まずは療養補償などの基礎労災保険職務上の病気や怪我で療養(補償)給付を受けるには、
まず労災保険が適用されなければなりません。労災が適用されたら、さらに船員保険独自の
上乗せ給付が行われます。
それでは、陸上労働者よりも手厚い上乗せ給付について見ていきましょう。
①休業手当金(図の★印部分の給付)
職務上の疾病または負傷による療養のため労働することができないことにより報酬を受けない日について支給するもの。
■支給期間・支給額
⑴最初の日から3日間
標準報酬日額の全額を支給(船員保険100%)
⑵4日目から4か月目(⑷を除く期間)
標準報酬日額の40%(労災保険60% + 船員保険40%)
(同一事由について労災保険法から特別支給金の支給がおこなわれる場合は、特別支給金の額を控除した額)
⑶療養を開始した日から1年6月を経過した日以後の期間
標準報酬日額から労災保険法に定める額を控除した額の60%
(⑴及び⑷を除く期間で、労災保険法に定める額が標準報酬日額に相当する額より少ない場合に限る)
⑷報酬を受けない4月以内の期間であって、療養を開始した日から起算して1年6月を経過した日以後の期間
⑵及び⑶に定める額の合計額
(⑴を除く期間で、標準報酬日額が労災保険法に定める額より多い場合に限る)
図 労災給付と船員保険給付
②休業特別支給金
労災保険の休業補償給付または休業給付を受ける場合を対象に、船員保険の福祉事業において法定給付を補完する給付として支給する特別支給金。
労災保険の休業補償給付・休業給付 |
船員保険(1日当たりの支給額) |
|||
療養のため労働することができないために賃金を受けない期間 | 休業手当金 | 休業特別支給金 | ||
① |
1日~3日 | 標準報酬日額の100% | ー | |
② | 4日~4月 | 標準報酬日額の40%ー労災保険の休業特別支給金 | 標準報酬日額60%ー給付基礎日額60% | |
③ |
5月~ (④の場合を除く) |
ー | 標準報酬日額80%ー給付基礎日額80% | |
④ |
1年6月経過後~ (労災保険による最高額に該当する場合) |
(標準報酬日額ー最高限度額)の60% | 標準報酬日額20%ー給付基礎日額20% |
※②と③の場合の休業特別支給金の支給については、労災保険の休業補償給付または休業給付の算定の基礎に用いる給付日額に30を乗じて(掛け算して)報酬月額に換算した額が該当する標準報酬月額の等級より1等級以上低い場合が要件となる。
障害補償給付などその他の給付に関してはこちらページで解説しております。→→コチラ!
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