知床遊覧船の事故について3
知床遊覧船「KAZUⅠ」が海底で発見されました。発見された水深も120メートルということから、船体の引き揚げには莫大な費用が掛かる見込みです。海上保安庁は、船体の引き揚げに先立って水中カメラでの船内捜索を開始するとのことです。一刻も早い行方不明者の発見に繋がることを願います。
遊覧船「KAZUⅠ」が事故3日前に受けた船舶検査について問題はなかったのかが報道されています。
日本の船舶の検査については、船舶安全法において規定されています。船舶安全法は、船舶の設計・製造段階から廃船に至るまでの間、船舶が航行するために必要な構造、設備などが技術基準に適合しているかを国など(JG,NK)が確認することを義務付けています。
そして、日本船舶の中でも、総トン数20トン未満の船舶を「小型船舶」といい、小型船舶の検査と登録は、国の代行機関として日本小型船舶検査機構(JCI)が実施しています。(船舶安全法第7条の2)
検査に合格した小型船舶に対しては、最大搭載人員などの航行上の条件を定めた「船舶検査証書」、船検の時期などが記載された「船舶検査手帳」及び船舶の両舷に貼り付けて船検に合格したことを表示する「船舶検査済票」1組が交付されます。
検査の種類は大きく3種類です。「定期検査」、「中間検査」、「臨時検査」。
定期検査とは、初めて船舶を航行させるとき、または船舶検査証書の有効期間が満了したときに受ける精密な検査です。
中間検査とは、定期検査と定期検査との間に受ける簡易な検査です。船舶の用途などにより実施時期が異なります。
臨時検査とは、改造、修理または設備の新替えなどを行ったときに受ける検査です。
今回の事故前に受検したとされるのが中間検査です。「KAZUⅠ」のような総トン数5トン以上の旅客船であれば、定期検査は5年ごと、中間検査(第1種中間検査)は、毎年1回受検しなければなりません。(船舶安全法第5条第1項第1号、2号、同法施行規則第18条第第1項、第2項第3号)
5年ごとの定期検査と中間検査を受けずに、航行することはできません。検査を受検せずに船舶を航行させた場合も罰則があります。罰則は行為者だけでなく、船長のほか、船舶所有者、船舶所有者の代表者については、罰金刑が科されます。
船舶安全法第18条(法律の原文は読みにくいため一部分かりやすく書き換えています。)
1 船舶所有者又は船長左の各号の1に該当するときは当該違反行為を為したる者は1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処す。
一 国土交通省令の定める場合を除き船舶検査証書又は臨時航行許可証を受有せざる船舶を航行の用に供したるとき
七 中間検査又は特別検査を受くべき場合においてこれを受けざる船舶を航行の用に供したるとき
2 船長前項各号に掲げる違反行為を為したるときは船長を罰するほか船舶所有者に対し同項の罰金刑を科す3 船長以外の船舶乗組員第1項各号に掲げる違反行為を為したるときは行為者を罰するほか船長に対し同項の罰金刑を科す4 船舶所有者の代表者、代理人、使用人その他の従業者(船舶乗組員を除く)船舶所有者の業務に関し第1項各号に掲げる違反行為を為したるときは行為者を罰するほかその船舶所有者に対し同項の罰金刑を科す
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