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Release: 2025/07/24 Update: 2025/07/24

船もリサイクルの時代だ!~シップリサイクル条約の話~

こんにちは。来島海事事務所です。

物には大抵寿命があります。船も例外ではありません。

船の寿命は、竣工から解撤(解体)まで概ね20年前後といわれていますが、なかには、50年以上活躍する船もあるというので驚きです。

 

では役目を終えた船は、どうなると思いますか?

 

今回は船の解撤についての国際条約、船のリサイクルについて深掘りしていきます。

 

シップリサイクル条約が発効されました

2025年6月26日 船舶解撤における労働安全確保と環境保全を目的として、国際海事機関(IMO)において採択されたシップリサイクル条約が発効されました。

 

「シップリサイクル」ってなに?

船をリサイクルすること!小難しくいうと、技術的、或いは経済的に寿命をおえた船舶を解撤し、得られた資源を再利用する一連のプロセスのことです。

船は、重量ベースで95%程度はリサイクル可能といわれており、解撤後、鋼材・非鉄金属材・什器・船用品・ポンプ・エンジン・発電機などあらゆるものが再利用可能なのです。

 

シップリサイクル条約が作られた背景

1999年以前、現役を終えた多くの世界中の船が、インド・パキスタン・バングラデシュなどの途上国で解撤処分されていました。労働力が安価で監視が最小限に抑えられるという理由です。

その解撤作業においては、アスベストや鉛などの有毒物質が適正に処理されない等、環境・労働者の安全等への配慮が不十分であり、1999年頃から問題視されるようになりました。以下の記事を読んで、私も衝撃を受けました。

https://www.nationalgeographic.com/magazine/article/The-Ship-Breakers

このような経緯で、2000年頃から国際的な規制の議論がスタートし、2009年に香港にて採択されたのがシップリサイクル条約です。2025年6月26日に条約が発効されました。

 

シップリサイクル条約によって、変わったことって?

船舶所有者の義務となったことが大きく2つあります。一つ目は「有害物質一覧表(インベントリ)を作成し、更新、保持をしなくてはならないこと」。二つ目は「船を解撤する際は、許可を受けている再資源解体業者に行わせなければならないこと」です。

引用:海事:シップ・リサイクル法の施行について – 国土交通省

 

条約が適用される船って?

排他的経済水域(EEZ)を越えて航行する総トン数500トン以上の船舶が対象です。

「なんだ外航船だけか」という勘違いには注意が必要です。

内航船を海外に売船する場合には、条約が適用されることになります。また内航船を外航船に切り替える場合にも、その時点で条約が適用されることになります。

また内航船であって国内で解撤する場合でも、解撤時に有害物質等情報を再資源化解体業者に提供する必要があるため、いずれにせよ有害物質一覧表の作成が必要になります。

 

つまり、総トン数500トン以上の船舶所有者は、有害物質一覧表の作成が必須と考えましょう!!新船は建造時に。既存船は2030年6月26日or解体時いずれか早い時期までに作成しましょう。

引用:船舶の再資源化解体の適正な実施に関する法律(シップ・リサイクル法)の施行についてー国土交通省説明資料

 

有害物質一覧表ってどんなもの?

有害物質一覧表とは、船舶に使用されている材料または設置されている設備に含まれる有害物質の種類および量が国土交通省令で定めるところにより記載されたものを言います。

引用:海事:シップ・リサイクル法の施行について – 国土交通省

有害物質一覧表の作成は、専門知識が必要であり、すぐ簡単にできるものではありません。

新船の場合は、造船所・舶用機器メーカの協力を仰ぎましょう。既存船の場合は、図面調査・実船確認・サンプル分析(同型船データ、過去の入渠記録等を収集)等の必要があるため、有償にはなりますが専門家による支援を活用するほうがよいかもしれません。

 

再資源解体業者ってどんなところ?

やはり再資源解体業者が多くが海外で、主要リサイクル国は、インド・バングラデシュ・パキスタン・トルコです。国内で再資源化解体の許可を受けた企業は、いまだ3社しかありません。(2025年6月時点参考:国土交通省HP

 

引き続き、海外での解撤がメインにはなりそうですが、大手海運会社と国内再資源解体業者が手を組んで「船舶リサイクルの事業化を検討する」というニュースもありました。

日本郵船とオオノ開發が船舶リサイクルの事業化に向け検討開始 | 日本郵船株式会社

 

これから益々、船のリサイクルが進み、脱炭素化の促進・循環経済が進んでいくことを願っています。

 

来島海事事務所

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