海事補佐人業務
② 海事補佐人業務
船舶事故や海難事故を起こしてしまうと、事故の原因究明とは別に海難審判所の理事官が、船舶や現場の状況、船長や関係者から聴き取りした内容、関係資料などを精査した結果、海技免許を保有している当事者(船長、航海士、機関士など)に過失があれば業務停止などの懲戒を行う必要があると認めたとき、当該者を受審人に指定し、審判開始の申立てを行います。
海難審判は、公開の審判廷で、理事官立会いのもと,受審人や補佐人が出廷(出席)し、口頭弁論により審理されます。そのため審判廷で述べたことは全て証拠として扱われます。
海難審判に関する書類作成や審理廷で依頼者の立場を主張してくれるのが、海事補佐人です。
「海事補佐人なんかに頼むほど金銭的余裕がないから・・・」
ご安心ください。
経済的理由で自ら補佐人を依頼できない人たちに対し、補佐人選任に要する経費を負担する制度が「海難審判・船舶事故調査協会」にあります。
海事補佐人の依頼などはすべて協会の相談員が行い、海事補佐人に支払う費用(7万円~9万円)は、所得に応じて協会が負担します。所得が少なければ、協会が費用全額を負担する場合があります。
当事務所は協会の賛助会員ですので、制度についても詳しくご説明致します。
また、行政がいつも正しいとは限りません。運輸安全委員会の事故報告書では相手船が衝突の主原因とされた事件でも、海難審判では立場が逆転して本船側が衝突の主原因となり、相手船の受審人よりも重い処分が意見されることもあります。
これにより相手との示談が終了していない場合では、海難審判での裁決を根拠に民事裁判での証拠として扱われることもあるようですので、たかが海難審判!ではないのです。
また、重大な海難となった事件については、事件発生地を管轄する地方海難審判所ではなく、東京にある海難審判所において審判が開かれます。重大な海難とは・・・
海難審判法(抜粋)
第十六条 審判に付すべき事件のうち、旅客の死亡を伴う海難その他の国土交通省令で定める重大な海難以外の海難に係るものは、当該海難の発生した地点を管轄する地方海難審判所(海難の発生した地点が明らかでない場合には、その海難に係る船舶の船籍港を管轄する地方海難審判所)が管轄する。
海難審判法施行規則(抜粋)
第五条 海難審判法第十六条第一項に規定する重大な海難は、次の各号のいずれかに該当するものとする。
一 旅客のうちに、死亡者若しくは行方不明者又は二人以上の重傷者が発生したもの二 五人以上の死亡者又は行方不明者が発生したもの三 火災又は爆発により運航不能となつたもの四 油等の流出により環境に重大な影響を及ぼしたもの五 次に掲げる船舶が全損となつたものイ 人の運送をする事業の用に供する十三人以上の旅客定員を有する船舶ロ 物の運送をする事業の用に供する総トン数三百トン以上の船舶ハ 総トン数百トン以上の漁船六 前各号に掲げるもののほか、特に重大な社会的影響を及ぼしたものとして海難審判所長が認めたもの
以前の海難審判は2審制でした。平成20年の海難審判法改正により1審制となりました。これにより、海難審判の裁決に不服がある場合には、東京高等裁判所に裁決の取り消しの訴えを提起することになりました。(海難審判法第44条第1項)
また、訴えの提起は、裁決の言渡しの日から30日以内に行わなければなりません。(同法第44条第2項)
裁決の取り消しに臨むには、新たに弁護士の選任と東京に出頭するための旅費・宿泊費という大きな費用負担が発生することを理解しておかなければなりません。
以上のことから、初めに行われる海難審判で納得する結果を求めるならば、事故後に早い段階で海事補佐人を選任して、十分な調査と証拠収集を行い、入念な準備をして審判に臨む必要があります。
海難事故を起こされて不安をお持ちの方は、お問い合わせフォームからご連絡下さい。
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※損害保険や被害者の方への示談交渉は本事務所では取り扱えません。
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