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Release: 2023/11/23 Update: 2023/11/23

海賊?それともテロ行為?

 11月19日、現地時間昼過ぎ、日本郵船株式会社が運航する自動車専用船「GALAXY LEADER(ギャラクシー・リーダー)」がインド共和国に向かっている途中、イエメン共和国のホデイダ沖付近を航行中に拿捕されました。日本の会社である日本郵船(株)が運航しているとはいえ、日本船籍ではなくバハマ船籍です。乗組員の中には日本人はいないとの発表がありました。

 その後、親イラン組織でイエメンの反政府武装組織フーシが犯行声明を出し、拿捕した自動車専用船をイエメン共和国の港に収容したと発表しました。

 また、AP通信の報道によると、自動車専用船の所有者である英国企業の株主にイスラエルの富豪が含まれているという。フーシは声明で「イスラエルによるガザへの侵略を停止させなければならない」と主張している。イスラエルとパレスチナ問題もこのような形で影響が出てきたのである。

フーシ派、日本郵船運航の貨物船“乗っ取り”の映像公開(日テレNEWS NNN) – Yahoo!ニュース

当社運航自動車専用船 Galaxy Leaderの拿捕について | 日本郵船株式会社 (nyk.com)

以下の報道により、乗組員25名の安全が確認されているとの事。(11/22時点)

フーシ派幹部が貨物船視察 乗員無事と系列メディア(共同通信) – Yahoo!ニュース

 

 仮に、今回のようなケースで拿捕された船舶が日本船籍で日本人船員が乗船していた場合、我が国政府はどのような対応をしてくれるのだろうか。そして、人命の保護という観点から見ても人質となった船員を見捨てずに本当に助けてくれるのだろうか。

 ところで、RED SEA付近のアデン湾では海賊問題により、我が国でも国際社会と協力してRED SEAとその先にあるSUEZ CANALの海上交通の安全を確保するべく、「海賊行為の処罰及び海賊行為への対処に関する法律(平成21年法律第55号)が成立している。その法律の中身を見ていくと、海賊の定義が定められている。

(定義)

第二条 この法律において「海賊行為」とは、船舶(軍艦及び各国政府が所有し又は運航する船舶を除く。)に乗り組み又は乗船した者が、私的目的で、公海(海洋法に関する国際連合条約に規定する排他的経済水域を含む。)又は我が国の領海若しくは内水において行う次の各号のいずれかの行為をいう。

一 暴行若しくは脅迫を用い、又はその他の方法により人を抵抗不能の状態に陥れて、航行中の他の船舶を強取し、又はほしいままにその運航を支配する行為
二~七(略)
 
 今回船舶を拿捕するときは、上空からヘリコプターに乗って船舶の甲板上から乗り組んで来たのである。定義で定める海賊は、船舶に乗船した者が船舶から乗り込んで来ることを前提としていることから、本法で定める「海賊」に該当しないことになる。そうすると、本法を適用して処罰することはできないと考えられる。
 
 今回のようなケースでは特別法を用いて海賊としては処罰できないが、一般法である刑法の条文には適用できそうな条文がありそうであるが・・・
 
 

 

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