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Release: 2025/05/07 Update: 2025/05/07

建設工事等従事者を運送する時は、届け出が必要?

こんにちは。来島海事事務所です。

2025年度の建設工事等の予定が活発に動き出す時期ですね。

本日は、建設工事等従事者を船舶で運送する際に気を付けたい「海上運送法の取り扱い」について解説していきます。

 

建設工事等を行う際、建設工事等に従事する者が船舶に乗船し、現場に向かうことがあります。

この際、海上運送法の適用は受けるのでしょうか。

つまり、一般不定期航路事業の届出は、必要でしょうか?必要ないでしょか?

海上運送法に規定される「一般不定期航路事業」を見てみましょう。

「一般不定期航路事業」に該当する運送とは、原則として非旅客船(旅客定員1~12名)を使用し、不定期(日程やダイヤを定めない)に他人の需要に応じて人を運送する事業(有償であるか無償であるかは問わない)とされています。

登録の判断基準として、具体例も紹介されています。

一般不定期航路事業について – 九州運輸局

「一般不定期航路事業」の登録が必要な場合:会社や官庁に頼まれて、海上にある施設などを点検や監視のため、または、海上での調査・研究などのために、人を乗せて運ぶ場合

「一般不定期航路事業」の登録が不要な場合:自己の用に供する運送(身内、友人、隣人を無償で運送することも含まれる)

具体例も合わせると、建設工事等従事者を船舶で運送する際、登録が必須な気がしますが、自己の用に供する運送とも捉えることができ、判断がつきづらいですね。

 

そういった状況を踏まえて、今回海事局内航課から「建設工事等従事者の運送に係る海上運送法の扱いについて」の文章が出され、判断基準が整理されました。

 

文章では、発注者と受注者との間または元請負人と下請負人との間で約される建設工事等の請負契約に必要な運送が想定されるところ、

航路の決定その他の船舶の利用に関し必要な事項を指示することができる者を発注者または元請負人とする請負契約に必要な乗船しなければならない者の範囲が、

請負契約で明示されている場合、「自己の用に供する運送」として、海上運送法の適用を要しない

 

と記載されています。

…文章だけだとかなりワカリヅライですね。

簡単に説明しますと、判断は「誰を乗せるか?」で変わってきます。

 

ここでは「海に家を建てる建設工事」を例に考えてみましょう。

「来島さんは、調査・基礎を元請A社と、建築・保守を元請B社と請負契約をしました。」

「しかし元請会社が全て自社でやるわけではありません。調査は、一次下請C社へ。基礎は、一次下請D社へ。建築は、一次下請E社へ。保守は、一次下請F社へ。請負契約がなされ、それぞれ行うことになりました。」

「さらに一次下請C社~F社も二次下請会社と請負契約をし、一部の仕事を委託しました。」

「請負契約が繰り返され、大所帯となりました。ちなみに、建設の過程では一般的なことです。」

さて、ここからが本題です。

調査一次下請C社が船舶を所有しており、建設工事等従事者を運送する場合」、自己の用に供する運送の範囲はどこまででしょうか。

答えは…「調査」の建設工事を完成するために必要な範囲内で乗船しなければならない発注者・元請・一次下請・二次下請の乗船者の範囲が請負契約において明示されている場合、当該乗船者の運送は「自己の用に供する運送」となります。下記の図の通りです。

つまり、「調査」以外の建設工事等関係者を乗船させる場合、海上運送法が適用され、一般不定期航路事業の届け出が必要になります。

では、応用編です。

元請A社(調査・基礎)調査一次下請C社の間で定期用船契約を締結し、元請A社が船舶の運航指示権を有している場合」はどうでしょう。

答えは…「調査」「基礎」の建設工事を完成するために必要な範囲内で乗船しなければならない発注者・元請・一次下請・二次下請の乗船者の範囲が請負契約において明示されている場合、当該乗船者の運送は「自己の用に供する運送」となります。

その他の建設工事等関係者を乗船させる場合、海上運送法が適用され、一般不定期航路事業の届け出が必要になります!

いかがでしたでしょうか。

文章だけ考えると難しいですが、図をご覧いただくと分かりやすく、請負契約の内容を整理し「誰を乗せるか」で考えるととてもシンプルです。

また、請負契約の内容も重要になってきます。これから請負契約を締結するという方は、請負契約に乗船者の範囲等を明示することも大切ですのでお忘れなく。

 

来島海事事務所

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