船員の健康管理について(持病編)
船員は、船舶に乗り組み、その職務に従事するためには、船員法第83条に規定される健康証明書が必要になります。この健康証明書は、いわゆる健康診断で、国土交通大臣の指定する医師が診察等によって、船員として船内労働に従事しても問題ないと認められた証明書です。
この健康診断の検査項目は、船員法施行規則第55条に規定されています。そして、検査結果に基づき、第2号表(健康検査合格標準表)によって医師が船内労働に適する状態かどうかの合否判定をおこないます。
つまり何らかの持病を抱えていても、検査結果と健康検査合格標準表に基づき、指定医師が「合格」とすれば、船員として働けるということです。
しかし、その後に問題となるのが健康を管理する「服用薬」の問題です。
どうしても船員とて乗船すると定期的にかかりつけの医療機関を受診することが困難となります。通常、健康証明書のために受診する医療機関とかかりつけの医療機関は異なることが多いと思います。そうすると、「船員」という職業を知らない医師の方もいたりします。
医療機関から出される服用薬が1週間分であれば、乗船中になくなってしまいます。定期的に受診できないことをかかりつけ医に相談しても、「それ以上出せないルールなんですよ。」と言われることも・・・・
そんなかかりつけ医を納得させるルールが存在します。それが、
「船員保険法第54条第2項の規定に基づき船員保険の療養の給付の担当又は船員保険の診療の準則を定める省令」(平成10年3月16日厚生省令第20号)
長期の航海に従事する船舶に乗り組む被保険者に対し投薬の必要があると認められる場合の投薬量の基準は、保険医療機関及び保険医療療養担当規則(昭和32年厚生省令第15号)第20条第2号への規定にかかわらず、航海日程その他の事情を考慮し、必要最小限度の範囲において、1回180日分を限度として投与することとする。
改正 平成21年12月28日 厚生労働省令第168号
これで一般の人には1週間分の服用薬しか出せないのが、船員であれば航海等の事情を考慮して180日分を限度として服用薬が貰えることでしょう。
ただし、ここで言う船員は、船に乗って仕事をしている人を指すのではなく、あくまでも船員保険に加入している「被保険者」です。
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