水上バイクの航行区域について
先日、小型船舶操縦免許の更新講習を実施した際に受講者から
「特殊小型船舶(いわゆる水上バイク(ジェットスキー))でどこまで行けるのか?」
というご質問を受けました。
どうやら福岡県内で水上バイクで船舶安全法違反(区域外航行)で福岡県警に検挙された事件が、水上バイク愛好家の間で話題となっているのが発端のようです。
更新講習講師として教科書通りに答えると
沿岸から2海里まで
というのが答えです。
しかし、もう少し詳細に解すると次の通りになります。
1.平水区域における場合
平水区域とは、船舶安全法施行規則第1条第6項に定められた範囲のことです。
この平水区域内であれば陸岸から2海里となりますので、平水区域内であれば陸岸に沿って航行できます。
つまり、平水区域内にある島であれば島1周できます。
平水区域に関しては、JCI(日本小型船舶検査機構)のホームページに分かりやすい資料があるので、
航行予定の海域を調べて下さい。→→→https://jci.go.jp/areamap/heisuiengan.html
2.沿海区域の場合
水上バイクの航行区域は船舶検査証書に記載があります。一般的に次のように書いてある場合が多いです。
「沿海区域 ただし、安全に発着できる任意の地点(※)から15海里以内の水域のうち当該地点における海岸から2海里以内の水域及び船舶安全法施行規則第1条第6項の水域内の陸岸から2海里以内の水域に限る。」
※沿海区域→船舶安全法施行規則第1条第7項に定められた区域
JCI(日本小型船舶検査機構)のホームページに分かりやすいイラストで解説があります。
↓↓↓↓↓↓
https://jci.go.jp/branch/pdf/simoda_kaiho.pdf
※「安全に発着できる任意の地点」とは??
特殊小型船舶の所有者や船長が、次のような点を考慮し判断されているもの(と考えられます)。
・水上オートバイを上下架できる設備やスロープなどの環境が整っている。
・乗船者が安全に乗降できる場所である。
・燃料を安全に給油できる。 など
上記だけではありませんが、操縦者、同乗者の安全確保はもちろんですが船舶の安全を確保する観点からも考えることが重要だと思われます。
あと、次のような例外規定について聞かれました。
「母船を準備して航行すれば、母船の周りを航行すれば〇〇島まで行けますよね?」
そのような規定はありますが、はっきり言えばその知識は間違いです。
なぜなら、「母船」は単に小型船舶を用意して水上オートバイの近くに伴走していれば要件を満たすわけではないからです。
「母船」となる船舶は搭載設備や搭載能力が必要となり、日本小型船舶検査機構(JCI)の検査登録が必要とです。
また、搭載される水上バイクも航行区域の変更登録が必要となるのでにレンタルボートや漁船は母船ととなれません。
母船の登録と搭載艇の変更登録が完了すれば、沿海区域内において水上オートバイが母船の周囲2海里において航行することが可能です。
つまり、母船があっても沿海区域を超えた海域では、水上バイクは航行してはいけないということでもあります。
母船として小型船舶を登録のに必要な要件には以下のような条件が必要だと思われます。
(思われますとしているのは、要件の根拠となる条文や規則がないためです。類似規定から推測したものです。)
①搭載艇を搭載することができる適当な場所を有する。(場所的要件)
②搭載場所には、搭載艇が船の動揺により移動しないように固定できる適当な装置を有する。(設備要件)
③搭載艇を容易に搭載場所に揚収し、かつ搭載場所から進水させることができる適当な装置を有する。(設備要件)
④搭載艇を搭載した状態で十分な復原性を有する。(構造要件)
以上の要件を考えても、どこにでもあるプレジャーボートでは要件を満たさないことはお分かりだと思います。詳細はお近くのJCI(日本小型船舶検査機構)支部にお問合せ下さい。
※一級や二級小型船舶操縦士の免許を持っているからといって、水上オートバイを操縦した際に陸岸から5海里まで航行できると思っている方もいるかもしれませんが、間違いです。
特殊小型船舶と小型船舶の操縦免許は別物と考えて下さい。
小型船舶の操縦免許の取得自体は、比較的簡単です。しかし、船舶の登録や検査、変更登録といった手続きは頑張れば出来ないことではありません。しかし、船舶の手続きだけに労力を費やすわけにはいかないと思いますので、是非お近くの海事代理士にお任せください!
来島海事事務所